NAROK exhibition catalogue
デルニエ・クリが拠点を置くマルセイユの文化複合施設「Friche Belle de Mai(フリッシュ・ベル・ド・メ)」にはギャラリーがあり、そこでデルニエ・クリはコロナ禍に「NAROK」と題した大規模な展覧会を開催した。本書はそのカタログとして制作されたもの。タイの地獄寺より着想を得て仏教世界における地獄をテーマとしたこのNAROK展には、世界各地に点在するデルニエ・クリのアーティストたちが作品を提供した。コロナ禍によりセンスのかけらもない地獄のような状況が露呈することとなったのは万国共通の現象であったはずで、それに対してありとあらゆる地獄の姿を創作の側から発信するというやり方は実にデルニエ・クリらしい。私感だが、本書の表紙を飾ったフィリピンのLouis Cordero(ルイ・コルデロ)のように、デルニエ・クリというゆるやかなコレクティブにおいても未だ少数派であるといえるアジアのアーティストたちの作品の力強さ、ユニークさが白眉。
アート倉持